わがはじ!

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『カメラを止めるな!』感想を超うだうだ書くので見てない人は読まないでね その②

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今話題の『カメラを止めるな!』を観てきた。昨日に引き続き2回。普段映画を全く繰り返し観ない質の自分が能動的に2回行ってしまった。由々しき事態である。そんな感情も観た人なら理解できるかもしれない。繰り返し検証してみても、やはり面白い。カップルで見なくたって面白い。なんならカップル溢れる中、おっさん独りだって面白い。

 

 

 

ということで、①に引き続き、以下は本当に完璧なネタバレ全開なので、見てない人は絶対見ないでね。

 

 

 

 

 

見ないでね。

 

 

 

 ※こちらは正式な『カメラを止めるな!』の感想となります

 

・突飛な王道ホームコメディ

ここから早速、すべてネタバレ含め漏らしだす。「漏らす」って、もうそれすらネタバレになるのが恐ろしい。正直な話、見た直後は「おー、何か言うのも野暮なほど痛快な作品!」と思った。ネタバレしない!とかではなく、王道で素敵な作品で何も言う必要がないと思ったのだ。ハッキリ言えば結構ベタなアイデアだと思うし、何ならアンジャッシュのコントみたいな劇中劇コメディである。

 

ただ、ここまで明確に前後の作品を分けたのは、もう「潔い」としか言えない。見ている側が本作の本当の構成を理解・納得している間に、前半の謎がことごとく後半で解かれていく過程というのはまさに「快感」だった。なんなら、そこに家族愛要素やら、文化祭サクセスストーリー感、そして観客と同じ目線の胡散臭いプロデューサーを置くことで、すげえバランスのとれた1時間半を産み出している。

 

なんなら、尺をもう少し設けて、本作後半の制作パートをもっと人間関係まで緻密に作れば、客は最後のドラマの完成で感涙したりするだろう。正直、そこまでせずともきっちり笑えるし、ほっこり出来た。前半ドラマパートでの様々な「不安定さ」が後半の安定感を余計に促進させており、観終わった後、後腐れのないスッキリとした感情を抱かせてくれる。

 

・メタ作品に没入するということ

さて、ここからが本題である。上記の通り、スッキリ見れたし何も言わなくてもいい、ゾンビ映画に何を言っても野暮というもの。というのが僕の第一印象である。ただ、オタクはやっぱし面倒な生き物だ。あえて「オタク」と主語を大きくしたが、きっとこれは個人的な問題じゃない、たぶんオタクなら、共感してくれる・・・よね。

 

というのも、鑑賞から時間が経つごとに様々なイフを考えたくなってしまったのだ。そして本作に心から「やられた!」と思ったのはここから話す内容についてである。

 

『ONE CUT OF THE DEAD』とは、前半のゾンビドラマパートの30分であるが、例えば僕らがこの作中世界にいたとして、これをリアルタイム放映で見たとしよう。その時にどんな感情を抱くのか、ということが気になってしまった。後半のネタバレのない純粋なB級ゾンビ映画として、生中継、そしてワンカット撮り。その予備知識があったなら。どう、本作を解釈するのだろうか。そんな好奇心もあって、今回実験的に感想文を2つに分けてみた。

 

www.wagahaji.com

 

①はあえて『カメラを止めるな!』の後半、本当の裏側を無視したイフの文章だ。ただのゾンビ映画・オカルト好きが本当に『ONE CUT OF THE DEAD』本放送を観たら。そして、好意的な解釈のもと本作を評価したら。という仮定で書いた批評記事である。ちょっと長く書きすぎた感が強いが単純に僕の趣味なのでそっとしておいてほしい。

 

こういう二重に世界観があるメタ作品の面白いところは、自分の視点も一緒にメタ化できるところだろう。ゾンビ映画を離れた劇中の現実は、我々の現実感とほぼ一緒だ。つまり、前半の『ONE CUT OF THE DEAD』をあくまで一視聴者として見た時の感情を、検討できるのである。そして、本作の優れた点はまさにここ。「本当に一度放映しちゃった」という点に尽きる。

 

我々は、ちょっと出来の悪いゾンビドラマを本当に30分見させられた。そこに対しては「退屈だった」「正直席を立とうかと思った」という声も周囲からは聴かれた。それでも、案外僕は、あの話の謎が気になってしまった。そして無理やりながらも解釈を付けたら、楽しくなってしまったのである。なんか本筋の楽しみ方からはズレてる気がしないでもないのだが、後半の「ネタバレ」を踏まえると「全てハズレと分かってて行う答え合わせ」も面白いものである。

 

・ 本作の凄い所はやはりミスリード可能な前半

そう、この映画はそうした「面倒なオカルトオタクの幻想をすべてぶち破る」という意味も孕んでいる。多分、そんな見方をしている面倒な人間もまずいないことだろう。何が言いたいかっていえば、あの頃の有象無象のエヴァ現象議論に根底から「バーカ」と言い放っているような痛快さを、本作からは見出してしまったのである。

 

僕は、そんな「実はこうなってました!」という笑い溢れる後半に対して、あえて本当に無意味な解釈・批評を書きたくなった。それは『ONE CUT OF THE DEAD』が、トラブルやネタも含めた形で、ここまで緻密に作られている事に対して純粋に感動したからである。人間は裏さえ見えなければ、音響や、動き、カメラアングルでここまで騙されるもんなんだな、と笑いと共に普通に驚いてしまったのだ。冒頭に少し触れたが、さながらアンジャッシュの勘違いコントのように、一方がトラブっていても、受け手側は思いのほか「見られてしまう」。

 

いや、正直前半単体が面白いかと言われれば、よっぽどなB級映画ファンでもなければ、そうでもないと言うだろう。それでも、我々は後半、同じルーティンながら種明かしを観ながら『ONE CUT OF THE DEAD』に「面白さ」を見出した。僕が今回のようなまどろっこしい手法を使って感想を書いたのも、確かに怪しい点はいくつもあれど、こんなミスリードもあり得るよね。という事をちゃんと文章にしてみたくなった。そして、そんな前半に対して我々がミスリード可能だからこそ、この『カメラを止めるな!』はベタながら、根を張った面白さを放っているし、再度咀嚼して見てみたくなるんだと思う。

 

 

以上考えすぎオタクが本作を観て抱いた感想をツラツラと書いてみたのだけど、まぁ、完全に考えすぎである。純粋に前半のホラー調から「え、これコメディだったんだ!」という驚きや新鮮さを受け取ることができれば、本作を楽しむ上でそれ以上の事はないと思う。なんなら、今日鑑賞し終わった際、隣のカップルが「楽しかったね!ヨロシクでーす!」「うん、面白かったぁ!ポン!って思わず笑っちゃった」って楽しそうに談笑してるの聞いて、書くのやめたくなったよね。これ。マジで。

 

多分夏コミ終わってから、延々脳内に溜まっていた何かがようやく漏れ出したものと思われる。そのきっかけになってくれた本作には改めて感謝を表しつつ、また9月である。頑張って働いていきたい(適当)