わがはじ!

めんどいオタクのブログ。同人誌もやってるよ。

堀江由衣ツアー「文学少女倶楽部Ⅱ」に行って感じた「17歳教」の本質

ライブレポというよりほぼエッセイなおじさん回顧文章となります…

唐突だが、自分がオタクだと自覚してから。推しのライブは貴重な生きがいのひとつとなった。

 

現場特有の高揚感、同じ時間を共有することで得られる臨場感、参加出来ることへの昂ぶりと参加出来た事への達成感。これらの感情は、なかなか他で代用出来るものでなかったりする。しかしながら、この2年ほど。この「ライブ」という文化自体がタブーとなってしまった。オタクでなくとも、様々なイベントやフェス、公演が中止になり、悲しい思いをした人も多かったことだろう。

 

2019年12月。思えば、僕がコロナ前の世界で最後に参加出来たライブは、堀江由衣のライブツアー「文学少女倶楽部」だった。上記の話に漏れず、コロナ禍以降、僕自身も以前エントリで残したこの時の感情を思い返しながら「チケット予約⇒中止」悔しい思いを繰り返した。

wagahaji.hatenablog.com

そして、それから2年半。ようやく、世の中は少しずつ「正常」に向かい始めている。以前と異なるルールは組み込まれているけれども、皆で集まって音楽を聴けるようになってきた。そして、コロナ以降初めてのオタク現場への参加も、何の因果か、堀江由衣のライブツアー「文学少女倶楽部Ⅱ」となったわけで。

堀江由衣ライブツアー2022 文学少女倶楽部Ⅱ~放課後リピート~

 

今回は勿論、参加出来て楽しかったよという思いと共に、本件について、関係あることないことも含めて、つらつらと独り言を漏らしていく。と、ライブの話に移る前に少しばかり、自分の昔の話をしたい。暇つぶしと思って付き合ってほしい。

 

・17歳での初体験

そう書くといかがわしい話っぽくなるけれど、単純に初めて堀江由衣のライブツアーに参加したという話だ。なんなら声優のライブというのも初めてだった。冒頭の写真に当時の半券を掲げた通り2006年のこと。年齢がバレてしまうけれど、まぁ、そんなところである。

 

既に本ブログに書いている話ではあるのが、僕は中学時代、同じ野球部だった友人(ここでは「A」としよう)に堕とされオタクの道を歩み始めた。徐々に深夜アニメを見始めたという僕に、Aは優しく布教するでもなしに「声優の名前分からないとかダサい」というスタンスで煽りやがった結果、異常なほど悔しくなって一週間でほぼすべてのアニラジを聞き通して、今の僕がいる。

 

そして、Aは特に堀江由衣を推していた。音源などを貸し出された結果、やはり影響され、僕は楽曲やアニメ、ラジオを通して同様に彼女のファンとなった。そしてライブに行ってみよう、という話になる。

 

2006年2月の東京国際フォーラム。なんとかチケットを確保し、ライブ当日。今でも朧気ながら覚えている。その日は平日だったので、2人とも放課後に部活をサボって、制服のまま急いで有楽町に向かった。開演ギリギリ、何とか現場に到着するとそこで目にしたのは屈強な黒ネコ同盟の面々。声優ライブ自体が初めてだったこともあり、周囲のオタクやその雰囲気に怯む気持ちを何とか抑えて会場入り。

 

そしてライブが始まると、完全に圧倒された。ラジオで毎週楽しみに聞いている、その御声が目のまえで歌い、MCトークしている。そして周囲からは一糸乱れぬコールが沸く。これがオタクのライブか…完全にカルチャーショックだった。興奮気味に感動を語る僕をよそ目に、Aは「まぁこんなもんだろ」と何故か冷やかに返した。そういうやつだった。

 

それから気づけば16年。社会人になってこの10年ほどはAとも会わなくなり、しばらく共に参加していたコミケも、僕一人だけが参加するようになった。友人づたいに聞けばAは、オタク文化とも縁遠くなったとのこと。僕をオタクに堕とした根源でもあるだけに多少寂しいもんだと感じつつ、今回のライブツアー参戦に当たりそんな事を思い出していた。

 

・「17歳」を本気で信奉しているように見える堀江さんにやはり涙する

ここからライブセトリやストーリーの話などネタバレ含むので、読むかどうか各位ご判断ください。

 

昔話を終え、ライブ当日の話をするに当たり、少し「17歳教」の話をしたい。言うまでもないことなので、かなり割愛するが井上喜久子氏を教祖とする声優界で一時力を持った新興宗教である。あまり僕が講釈垂れても仕方がないので、知らない方はニコニコ大百科あたりを参照してほしい。

17歳教とは (ジュウナナサイキョウとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

 

とかく「自分は17歳である。」という気概と信念を持って生きていくという発想なのだけれども、こと堀江女史のライブツアー「文学少女倶楽部」に参加してみるとその思想の強さに感じ入る。特に今回コンセプトに関して言えば「高校生活文学祭でのライブをタイムリープしながら繰り返す」である。17歳教が形骸化して久しい中、もはやルターの宗教改革のような姿勢が潔い。

 

バンドメンバーとダンサーらが部活である「文学少女倶楽部」の一員としてバンド結成、文化祭でのライブ成功を目指し、我々「劇団ほりえ」(ライブに集うファンのこと)がその文化祭の観客となるストーリー構成なのだが、不思議なもので幕間のドラマ映像と共に、細かく演出されたライブを見ているうちに、自分の高校時代も(黒歴史含めて)過ってしまう。

 

セットリストも良くなかったのだろう。当然のことながら、今年の3月にリリースされた新譜『文学少女の歌集Ⅱ-月とカエルと文学少女-』の曲を主体としながらも、あの頃の楽曲をふんだんに盛り込んでくる。2000年代、シングルとしてリリースされた『キラリ☆宝物』『ALL MY LOVE』『ヒカリ』『Days』『恋する天気図』などなど、10代電車内でバカ程聴いた楽曲は心の奥底に染み込んでおり、いちいちチョイスが刺さって仕方ない。既に前半で涙ぐんでいる。

 

ライブお馴染みの『笑顔の連鎖』『YAHHO!!』ももちろんのこと、更に、堀江女史のファンで知られ、数々の複雑な名曲を提供するアーティストの清竜人氏の楽曲も加わり、当時からMDに録音しては、通学途中に聞き続けた楽曲が生バンド演奏となって延々押し寄せてくるわけだ。改めて一言で言おう、そんなん感無量じゃねえの。

 

今回コロナ対策ということで発声は禁止。いつものコールが出来ないことに対して「それで楽しめるのだろうか」という一抹の不安は正直あった。それでも、今回はペンライトに「声援ボタン」(フー、とかハイ!とか言う)を仕込むといった離れ業や、一曲丸まる振り付けを強いられる(劇団なので仕方のないこと)場面もあり、声を出さずとも楽しめる気遣いが随所に見られた。

 

そして、やはり普段なら全力でコールしている場面において、僕らは全力でペンライトを振る。声は出せずとも、決してほっちゃんへの「思い」が消えたわけではない。ライブ本編最後の定番曲『CHILDISH♡LOVE♡WORLD』において「大好き」と叫ぶはずの箇所では、万感の思い溢れて、やはり涙が零れてしまった。正面から見られたら完全なるキモオタのそれである。その上、声が出せない分、内省が強まったのか、2006年に有楽町で『笑顔の連鎖』を聴いて流した涙と重なった。

 

その瞬間、まるで僕自身も、17歳だった頃に戻ってしまったようだった。「若き頃を忘れない」なんて言えば、老いたことがただ鮮明化するだけかもしれないけれど、10代に得た感情・激情は、やはり貴重なものである。数々の楽曲と堀江女史の声に触れる中、それを呼び起こされたのは間違いない。自ら17歳であることを信じ、見る人にすら17歳を具現させる。

 

そうした意味で、僕にとって今回の「文学少女倶楽部Ⅱ」は「17歳教」の真髄を見せられたライブだったと言えるのかもしれない。

 

・あの頃から続き、そして、これからも続くもの。

少し話は戻るが、この連休。先の友人Aに対して「久々飲もう」と誘った。というのも、彼が勤めていると聴いていた会社が傾きかけているというニュースを偶然見て、多少心配になったからだ。こちらに他意はないものの、向こうは怪しんだかもしれない。ただ、思いのほか簡単に承諾してくれた。

 

Aから提示された日程を見てみると、不思議なことに見覚えのある日にNGがついている。「これ…いやまさかな。」脱オタしていたと聞いていた為、恐る恐る確認を取る。

 

堀江由衣のツアー日程じゃねえのこれ?」

「そうだが」

 

案の定、彼は今回ツアーに参戦していた。実際に飲みに行って話してみた結果、何のことはない。コミケやら同人文化には多少縁遠くなっていたものの、アニメは毎期数作品見続けているし、何なら堀江由衣現場には足を運び続けていたらしい。2019年のツアーにも参加していたということだった。僕としては、なんだかホッとしたのと、少し嬉しくなってしまった。

 

昨晩のライブ終了後。予想を遥かに超える3時間半の公演を終え、終電もギリギリだったため、一緒に参加したメンバー各位との打ち上げは見送って、早々にAと地元へ帰ることにした。何も食べていなかった為、駅周辺で深夜までやっている寂れたラーメン屋に入り、さっそく瓶ビールを傾けた。

 

Aはあの頃のまま不愛想で、何を言っても言い合いっぽい口調となる。「最高だったな、 『ALL MY LOVE』を令和に聞けるなんて」「『陸上防衛隊まおちゃん』なんて、今誰が分かるんだよ。」「バカ言え、今むしろ見るべき名作だろ。丸山シルヴィアの関西弁で俺はファンになったんだから。」「大阪弁と言えば、松岡由貴一択だろ。」「は?お前、松岡由貴大阪弁キャラ全員言えんのか?…」気づけば、日付が回っていた。

 

16年前。こいつと共に、学生服着ながら追っかけた声優が、今も尚推しとして居続けてくれている。心から凄いことだと思った。一時は離れた関係がこうして、一人の推しのライブを起点によみがえった。Aとはもしかしたら、この10年そうであったように、この後10年会うことはないかもしれない。それでも、ある種連なった結び目のように。出会うべきタイミングがあれば、邂逅するときは来るのだとぼんやり思った。

 

「本当、元気でいてほしいよな。」「それな。」

 

最後にそう言って僕らは店を出た。17歳教は、僕にとってもあの頃に戻れる思想なのだ。堀江由衣という存在がいつまでも17歳でいようとしてくれるおかげで、僕らも、いつだって17歳に戻れる。現実逃避だと怒られるかもしれないけれど、また10代の気持ちを背負って、歳を取っていく。あの時の推しが今も尚推せるからこそ、後ろに支えがあるからこそ、人は前を向ける。しかも今も尚、その17歳はパフォーマンスを更新中なのだ。はっきり言ってやろう。最高じゃないか。

 

そんなことを思いながら、胃もたれで目覚める今日。いや、もう深夜のラーメンはしんどいすね。

 

 

以上、という感じ。今回ライブも最高だったけれど、やはり全力で声を出したい。コールで思いを伝えたい。書きながら、改めてそんな感情が強まってしまった次第です。

 

4000文字強書いておいて、半分以上エッセイ記事になってしまい恐縮なのだけれども、現場で見るほっちゃんはやはり最強なんだよな…という気持ちだけ伝われば僥倖でございます。連休最後ということで鬱蒼とはしておりますが、本当にいい体験でした。いつまでも、この貴重な経験が出来る事を祈って。