わがはじ!

めんどいオタクのブログ。同人誌もやってるよ。

台北を女装して歩いて感じたこと~初めての台湾旅行記~

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案内してくれたウェンさんと僕

更新が1か月空いてしまった。いや、ちゃんと書こうと思っていたことはあるのだけれども。その中でも台湾旅行については書こうと思っていて。アジア最大級と謳われるLGBTのイベント「台湾同士遊行(台湾レインボーフェスティバル)」をぜひ一度生で見てみたく。そんなちょっと普通とは違った目的のもと、20代のうちに台湾へ旅立ってきました。

 

台北行ってきました

10/26~10/28の2泊3日。短い期間ではあったが、実は自身初めての海外旅行だったりした。台湾に行く、と知人らに伝えると「台湾なんて近いから国内旅行と一緒だよ」と多くの人から言われ、それらに対しては「あぁ、らしいね」「あぁ、みたいだね」とかちょっと知った感じで応じていた。だが、流石に海外である。英語で言うならアブロードだ。舐めていいはずがない。

 

イミグレなんかで「お前なんでこの国に来たんだ」とか英語で詰められてどもったり、変なものもっていけば税関で止められたりして警察犬に脅されたり、あのトムハンクスなんか空港に幽閉されて大変な目にあっていたのを映画で見たことがある。

 

知人とは現地台北で待ち合わせだったので、なんと飛行機から宿の予約まですべて一人でこなす。そこは流石の三十路である。LCCはバニラエアを選択したら、漢字で書くと「香草空港」と知る。なんだか昨今話題のカナダに行きそうな感も否めないが、そこは金を払ったので台湾行きを信頼することに。そして心配していたイミグレは、Webで事前に入力が可能。実際、何もしゃべることなく指紋採取だけで通されてしまった。超便利である。

https://oa1.immigration.gov.tw/nia_acard/acardAddAction.action

台湾オンライン入国カード

 

しかしまだまだ試練は続く。両替だ。ウェブでどうやら現地空港のカードキャッシングのレートが一番いいという記事を読み「それなら僕も」と意気揚々とATMへ。中文から英語へ切り替え、解説通りに画面を操作し、最後のキャッシング画面を華麗にプッシュ・・・するとどうだろう。レシートだけで現金出てこない・・・え、なに書いてあんの?あ、後ろめっちゃ並んでるからとりあえず退けよう・・・恥はかきたくない的日本人気質が仇となり、呆然とする僕。とりあえず落ち着くことを最優先させる。これは・・・やられた・・・?

 

少しずつ自分を落ち着かせると、そもそもカードキャッシングを可能にする手続きをしていないことに気づく。つまり、日本国内でもキャッシングできる状態にはない。なぜそんな状況で突如海外でキャッシングなどしようと思ったのか。海外旅行の恐ろしさを実感する。仕方なく現金をいそいそと窓口にもっていく。動揺そのまま「ジャパニーズ¥、to タイワンドル OK?」と、レベルの低いコミュニケーションを投げかけると「あぁ、日本円ね」と返され、心がさらに折れる。

 

桃園空港から何とか高速鉄道MRTの乗り換えにも成功し台北駅へ。チェックインしたホテルでは英語しか通じなかったのでとりあえず「アーハン」を連発しているうちに、鍵が貰えた。この時点でメンタルヘルスに対するダメージは無視できるものではなかったが、人間何とかなるものである。

 

・台湾レインボーフェスティバルの凄み

到着したら、先に到着していた秋葉原の飲み屋A-buttonのマスター、しんいちさん夫妻と案内をしてくださったウェンさんと合流。西門(渋谷みたいなとこ)でご飯を頂いた。海鮮居酒屋のようなところで、出るもの出るもの全て旨い・・・中華でもない、南国テイストな味の付け方はやはり日本人には合うように思えた。

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なんかわからんが、だいたい旨いというのが凄い。

そして、お腹も膨れ、酔った足取りの一行をウェンさんはそのままゲイカルチャーで有名な広場・西門紅楼に連れて行ってくれた。なんていうか、圧巻の一言。もう圧倒的オスみ。広場一面見渡す限りがほとんどマイノリティ。いや、そもそもマイノリティ?マジョリティ?・・・そんな多数とか少数とかそんな定義すら意味がないようにも思えてしまう。

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マイノリティって言葉が本当に無意味に感じる瞬間が凄い。

 そもそも台湾の同性愛事情は、他国と比較しても進んでいる。台湾ではすでに2003年には同性愛に関する法制度の試みがなされるなど、その活動も積極的であり、法整備も目前とされる。詳しくはこの記事参照ということで。

https://www.taipeirainbowfestival.com/jp-abouttprf

 

翌日27日土曜日が本番の台湾同士遊行(レインボーフェスティバル)こともあり、街中が一種異様な盛り上がりを見せていた。そんな自由な気風なら、僕だって女装してもいいんじゃないかと思いあがってみたという具合だ。

 

はっきり言えば、性的嗜好において僕はバイセクシャル寄りではあるものの、社会的に見れば当事者とは言えないだろう。A面だけで生活を強いられているほどTSでもなく、女装癖も必須ではない。そんなことしていると享楽的女装者と叩かれることもある。それでも、そんな「悲劇的当事者による区分」すら無意味に思えるほどの個の強さと自由さを、この台湾のカルチャーには見ることが出来た。

 

・朝っぱらから女装で台北散歩

翌朝。どうも最近、長く眠れない。旅行先ならなおさらである。日々起きている6時過ぎには目が覚めてしまう。たまに言われる「ジジイかよ」という揶揄も笑えないほど。そして、本番のフェスティバルは14:00から。もてあますどころの話ではない。

 

そんな早起きと貧乏性がたたり「旅先で時間を無為に過ごすのは勿体ないのでは」とさらにソワソワするジジイ。テレビを付けても、中文の報道のテンションの高さに煽られ疲れだす。もういっそ待ち合わせ時間よりも数時間早く身支度をし、台北の街並みを歩いてみることにした。

 

昼のパレードも女装で歩く予定だったので、当然朝から女装である。軽く書いているが、正直僕からすればめちゃくちゃ大英断である。日本では女装で通常外出などまずしない。過去数回やってみたことがあるが、なんとも言えない周囲からの目線などで心が持たない。特に都会はダメだ。昔、デパートメントHへ出向いた際、深夜の山手線に女装して乗車したときは罰ゲームにしか思えなかった。

 

そんな記憶を頭の片隅に、ホテルからドキドキで出発。やはりコンパクトに纏まった市街地、午前中から人通りは多い。周囲を気にしていない風を装いながらも、何とか気を張って街中を歩き続ける。当然、女装勢でよく言われる「パス(見た目から女装と気づかれないこと)」などは望むべくもない外観。化粧はしているが、一見して女装しているとバレる見た目なのは否定するつもりもない。(冒頭の写真参照)

 

だが、なんだろうか。日本に感じられる目線の感覚はそこになかった。「旅の恥はかき捨て」とはよく言うが、そんなプラシーボ的安心では決してない、確かに「あんま気にしてない」という感覚がそこにあった。勿論、その後パレードが始まってしまえば、そんな人たちが大量に練り歩くので周囲の目線など気になるはずもない。しかし、あえて一人で。パレードとしてでなく淡々とひとりそんな姿で街を歩けたからこそ、あぁ、これがこの国で同性愛カルチャーが根付く空気なのか、と心から感じることが出来た。

 

ちなみに台北の街並みは、僕みたいな「ちょっとレトロな建造物・路地裏ファン」には堪らない風情で、いちいちビルの外壁に取り付けられた数多くの室外機を見つけては興奮しながらシャッターを下ろしていた。むしろ、女装なんかよりもそっちのほうが怪しまれていたのではないかと思う。

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わかる人にはわかるこの壁の魅力。

 

・南国という空気、自立した雰囲気に考えること

その後の台湾同士遊行も、ものすごいエネルギーだった。圧倒的な参加人数、そして見渡す限りのゲイカップルやレズビアン。先にも書いた通り、マジョリティ・マイノリティという区分に意味が見いだせなくなるほどだ。

 

このフェスティバルに参加したことで、このイベントが台湾における同性愛カルチャーの一つの大きな波であることは十分に理解できた。しかしそれ以上に、その前後に街を歩いたことで、そんな大波が起こる海の性質、つまり台湾という国の気質を理解できたことは非常に面白かった。

 

例えばコンビニでの買い物ひとつとっても空気が違う。イートインコーナーがほぼ必ずあり、店員と客が適当に会話しながらほかの客を接客したり、あるいは品出しをしたり。店舗も日本と同じセブンイレブンファミリーマートなのが、余計に国の間のコントラストを強調させる。

 

更に街を見ていて目につくのが道を走る圧倒的なバイクの数である。台北周辺は、日本でいえば京都・名古屋ほどの鉄道網が広がっている。通勤や移動に関して、想像レベルでは鉄道を使えばそこまでの不便はなさそうだが、信号待ちをしているバイクを見ているとまず圧倒される。またこれに関連するのは、街並みの個人商店の多さだ。台北の街の面白さはこの個人商店に支えられていると言っても過言ではないだろう。古いビルに入った個人商店の多くは日本における「あの頃の商店街」を思わせる、街の強さを見せてくれる。

 

詰まるところ、大資本や公共交通機関に頼るよりも、まだまだ個で動くという気概の強さを感じた。個という意識が強いからこそ、他を気にしない。ここまで同性愛文化が根付く寛容さとは、人を気遣う以上に自己の確立を優先させる空気なのだとふと学ばされた思いである。

 

ただ、ここで台湾の歴史について細かく論じることは避けるが、おそらくこの国も過渡期なのかもしれない。MRTに乗り桃園空港へ向かう間には、郊外に行くに従い高層マンションやショッピングモールが確認できた。中間富裕層の住宅エリアが鉄道に沿って広がり、そこに大手資本の商店が構えだしている。また今回は台北のみをうろついただけだった為、他のエリアを覗けば違う側面が見えるだろう。

 

 

ということで、何はともあれ2泊3日の初海外・初滞在旅行者が何を語っても片腹痛いというものだろう。いやぁ・・・メシもうまいし、空気はいいし。もっとゆっくりしたかった・・・一緒に回ったしんいちさんご夫妻、案内してくださったウェンさん、そして突発ながらも、こんなわけわからんおっさん相手に夜市を一緒に回ってくださったセズ奈さん、ほむらさん、本当にありがとうございました。

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夜市で臭豆腐デビュー。普通に旨いけど、匂いはやっぱすごい。

 

いやぁ。いいとこですよ。台湾。また行きたいです。