今回の話は読んで字のごとくである。
上坂すみれとは言うまでもなく今をときめくアイドル声優の筆頭であり、お嬢様かつ上智大・ロシア語専攻卒というそのちょっと飛び出た遍歴から2011年のデビュー以来注目を浴び、現在も人気声優として活躍。声優業では『中二病でも恋がしたい』の凸守や、最近では『アイドルマスターシンデレラガールズ』のアナスタシア役など、物語に埋没しないキャラを担当することが多く、僕自身も数年前から気になっていた。
ではなぜ突然、この2016年12月になって突如、明確な意思を持って彼女のファンになろうと思ったのか。そんな思いについて、滔々と語ってみたくなった。
・「固定ファンがいない」
僕は近年、特定の女性声優を好きになることはなかった。このブログでもさんざん喚いている通り、僕にとっては黒猫同盟主またはスタチャのスマイルサイボーグこと堀江由衣女史こそが絶対無二の存在であり、その牙城が崩れることは今後もないに等しい。
まぁ、それは置いておくとしても正直な話だが「声優=アイドル」という認識が広く一般化し、近年の「そもそも声優はアイドル業やってなんぼっしょ」みたいな風潮にはちょっとうんざりしていた。僕の好きな女性声優を上げていけばわかる通り、松岡由貴、豊口めぐみ、金田朋子、南央美、能登麻美子・・・「声優」という職業があってこその歌手活動だろみたいな、そもそも自分よか年下の声優なんて小恥ずかしくて好きになれるか、みたいなまぁそんなめんどくさいオールドファッション声豚だったわけだ。
なので、僕の認識として当初上坂すみれも、そんな近年の「アイドル=声優」の一人というか、どうせ最近の若い世代オタが好む子なんだろうと思ってたのだけど、このツイートを見て手が止まる。
上坂すみれライブ、2000人の会場で特にチケ即完も高騰もしなかったのに6000人規模という本人すら無謀だと思ってたライブを敢行し当初は諦めていた上坂さん本人も宣伝に四方八方駆けずり回ってるうちに徒労感と固定ファンの少なさに徐々に鬱入り始めてるの悲しい
— 渡辺 (@0ta9w) 2016年11月26日
「固定ファンの少なさ」・・・?上坂すみれに固定ファンがいない・・・?僕は違和感を覚えた。だって、デビュー曲はたしか田村ゆかりが主演を務めた『波打際のむろみさん』OP曲、キングレコードがこれだけのバックアップを行い、声優参加作品は数知れず、ルックスもよい、知名度もある。そんな彼女が両国国技館を埋められない・・・。
疑問は募るばかりだった僕は、ふと彼女に興味を抱きウィキペディアを覗く。「歌手」の欄を見て、さらに僕はくぎ付けとなる。
歌手[編集]
「上坂すみれプロジェクト」と題して、2013年よりスターチャイルドにて音楽活動を行なっている。2013年2月11日(建国記念の日)、ニコファーレで開催された同プロジェクト発表会にて、「革命的ブロードウェイ主義者同盟」の結成が宣言された。この同盟は「生産・団結・反抑圧」をスローガンに掲げ、「同志諸君(ファン)」と「決起集会(イベント)」を重ね、最終的には「国家」を樹立することを目標としている。
このように同プロジェクトは、上坂が影響を受けた数々のサブカルチャーと並んで、旧ソ連の共産党体制や左翼運動をオマージュした語彙や意匠が多く用いられている。だが、その狙いは政治性ではなく「(ソ連の魅力を)ある種のファンタジーの世界観として再現できれば」としている(後述する「ロシア」「趣味」の項目、ならびに「共産趣味」「軍歌趣味」も参照)[11][23]。
あのさ・・・わかるよ?遍歴からさ、ロシア色というかソビエト色出したかったり、そもそも本人も好きだというのも、理解できる。でもさ、これ今の若いオタに届くのか・・・僕の知ってる周囲の若オタはキラキラした「i☆Ris」「μ's」「シンデレラガールズ」に現を抜かしている。そんな中に「共産趣味」って。はっきり言ってやろう、アホじゃないのか?
そこで、僕は決めた。「ライブ、行ってみよう」と。ここまでこの2016年に、売れ線驀進できそうなアイドル声優に、売れ線から外れたプロモーションを用いて攻め、キングレコードも何かイマイチハマらず、ただただ真面目そうな彼女が「革命」を呼びかけながら歌を歌う。これは何かが確実に狂っている。現場に行かなくてはと、そう直感で思ったのである。
そんな思いをツイッターにぶちまけてみると、友人からリプライ。「チケット取ろうか?」渡りに舟とはこのこと。「ぜひお願いしたい」とお願いしてから、ものの数分でチケットゲット。え、本当に余ってるのかよ・・・そういうマーケティングじゃねえの?と戦慄を覚えるも彼女の音源をとりあえずitunesで落とすことにした。
・そこに流れるレジスタンスこと桃井はるこの血脈
『革命的ブロードウェイ主義者同盟』『20世紀の逆襲』というアルバム2枚、そしてデビューシングル『七つの海よりキミの海』を早速聞いてみた。感想としては「本当に売れ線じゃねえな・・・」というものだった。基調路線はツーバスドコドコ、時に混ざるテクノポップと軍歌調ポップス。いや、俺は好きだよ?でも、さっき言った通りこれオタクがどうサイリウム振るのさ、頭を思い切りズンガズンガさせるしかないような曲ばかりで笑う。
でも、僕は決して嫌いにはなれなかった。それら楽曲と彼女の趣向に貫かれているのは紛れもなく「サブカルの矜持」であった。この意思に満ちた音楽・・・どこかで・・・。そんな時僕の脳裏にふと過ったのは、桃井はるこ女史の存在であった。
現に後からwikiをよく読んでみれば声優への憧れのきっかけは『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』完全に上坂すみれはモモーイチルドレンであった。なるほど、この何とも言えぬサブカル臭さ、そして売れ線とはちょっと違うポップ路線。直感でライブ行きを決めた僕だったが、好きなる理由は楽曲にもしっかりと存在していた。
僕が声優の個人名義のライブに行ったのは、ぶっちゃけ堀江由衣女史とこの桃井はるこ氏の2人のみなのだ。もともと週刊アスキーで文章を書いていた桃井はるこ氏は、声優以前にひとりの生粋のオタクであるということはあまりに有名な話であり、彼女の作る楽曲の中には古き良きアキバカルチャーの息吹がいたるところに感じられる。
今回、上坂すみれの楽曲を1週間ぶっ続けで聞く中で、その桃井はるこの血脈を継ぐ存在ではないかという点にたどり着いたのである。
12年間、コミケ初参戦から共に参加し続けている腐れ縁のS氏という友人がいる。そいつは古くからのモモイスト(桃井はるこのファン)であり、何年も前にドヤ顔でこんな事を言っていたのをふと思い出す。
「田村ゆかりは王国、堀江由衣は同盟、あえて言うなら水樹奈々は帝国としよう。桃井はるこはじゃあなんだと思う?レジスタンスなんだよ」
当時聞いたときは、ドヤ顔で語るS氏の表情がバカバカしくて爆笑した。正直今書いてみても、意味が分からない。だが、どこかその言葉には一理あるように思えてくるのだ。唯一、桃井はるこは自分の曲を、自分の作詞で歌う。本当のシンガーソングライターだ。自分の生き様をそのまま歌い上げる。それは時にエロゲの曲になったり、アニメのタイアップになったりもする。
この2016年、S氏が宣言した「レジスタンスこと桃井はるこ」というスタンスに一番近い存在こそ「革命家 上坂すみれ」ではないだろうか。僕がバカなことを言っているのも分かる。ただ、歌手としての在り方や売り方が不器用であればあるほどに、アイドルからはちょっと離れた「声優歌手」としての輝きをついつい彼女に期待してしまうのだ。
12月23日、天皇誕生日。「上坂すみれのひとり相撲2016~サイケデリック巡業~」久々に声優のライブに出向く。3連休のクリスマスなぞ粉砕するためにも、楽しんで来ようと思っている。